わたし好みの新刊   20166

『虫のしわざ観察ガイド』   新開孝/文・写真  文一総合出版

 野外を出歩いていると,しばしば,不思議な虫(昆虫)のしわざにお目にかかる。

くるくるとくるまった木の葉,枝の途中にできているまん丸い玉,まるで人が書いた

ような葉っぱの模様など,虫のしわざも様々だ。いったいどんな虫が造ったのか,気

になりながらもしわざの〈主〉がわからないでいることが多い。この本を見ていると,

それらの疑問が順々に解明されていく。

まず,〈虫のしわざ〉にはどんなものがあるか,著者なりの分類が書かれている。

まずは「食痕」,次に多いのが「巣」,「マイン」と呼ばれている〈絵かき〉模様,
「糞」もある。「虫こぶ」や「産卵痕」,「卵のう」,「繭」,「木の穴」(羽脱孔)
など
もある。これらは,里山の哺乳動物調査で使うフィールドサインと似ているが,
の場合は多種多様で,その主は特定できない場合が多い。でも,この本を何度もみ

ているうちに,ほとんどその〈しわざの主〉は推測がつくようになりそうだ。

「パッと見た目の印象」で〈虫のしわざ〉が分けられている点もわかりやすい。

あわせ,まきまき,並び穴,網目,かじり,ぼこぼこ穴など24項目の視点が書かれて
いる。これらを頭に入れていると,〈虫のしわざ〉の目の付け所がつかめてくる。

本文では,場面毎でも〈虫のしわざ〉が紹介されている。草花,ササ・タケ,樹木,
地面や崖,水辺,人工物に分けて,それぞれの〈しわざ〉が紹介されている。まあ,

こんなにもあるのかと思うほど,多彩な〈虫のしわざ〉が写真入りで紹介されている。
これらを眺めているだけで,虫たちのしたたかさが伝わってくる。それぞれの
しわざ
の主(昆虫)も写されている場面も多い。幼虫,繭,成虫の区別など,解説
もわかり
やすく工夫されている。見るだけでも楽しい一冊である。

                           2016,02刊 1,800

 

『昆虫の体重測定』(たくさんのふしぎ20164月号) 福音館書店

 〈昆虫の重さを量る〉なんて,奇抜なことをする人もいるものだとまずは驚いた。

ふつうは1gにも満たない小さな昆虫の重さを,いろいろ工夫しながら量った記録が

書かれている。小さなテントウムシなどは手のひらにのせてもまったく重さは感じない。

もちろん,普通の台所にあるような天びんでは重さは量れない。そこで著者は電子天び

んを用意する。これなら1/1000gぐらいでも量れる。まず,比較しやすいように身の回

りの小物の重さを量っていく。1円玉は1.0001g,マッチ棒一本は0.15g,輪ゴム一つは

0.23g,切手一枚0.05gとなった。さて昆虫はそれぞれ何グラムあるだろうか。

 まずはテントウムシを天びんの上にのせると…,トコトコと歩いてあっという間に飛

び立ってしまう。そこで一工夫。透明なビニール袋にテントウムシを入れて重さを量り

直すと…,0.4801gと出た。袋の重さを差し引いて,テントウムシの重さは0.05gである。

これは切手1枚と同じ重さだ。次はもっと軽いヤブカの重さを量る。ヤブカの重さは,

0.0014g714匹のヤブカと1円玉が釣り合っているイラストが印象的である。反対に重

い昆虫の重さはどれぐらいあるのだろうか。一番重そうなカブトムシの重さを量ると…,

なんと10gもあるとか。さすが,昆虫の横綱である。同じ種類でもオスとメスとはずい

ぶんと大きさの異なる昆虫もいる。オンブバッタのメスの体重は0.45g,オスの体重は

0.08g5倍も違う。ほぼ同じ大きさのオオムラサキとアサギマダラの体重は6倍もち

がう。長距離を移動するアサギマダラはやはりうんと軽くできていることがわかる。

また,幼虫と成虫とでは重さも違う。カブトムシの幼虫の重さはさすが重い。昆虫の体

も,「体重」という目で見ていくといろいろ違った視点が見えておもしろそうだ。 

      2016,4月刊  667

             新刊 2016年6月